きもと社員Blog

木元省美堂の社員が様々な話題をお届けします!

紙の思い出

2022年03月03日

啓蟄が近づき、ようやく春らしい陽気になってきました。
ご機嫌いかがですか? 制作部のことことです。

あんが紙について書いていたので、私も紙の思い出を

私は書籍の色校正を扱う部署に所属しており、紙に接する機会は多いのですが、扱う紙のほぼ100%が洋紙です。

銘柄によって紙色・手触り・インキの乗り具合もさまざまで、珍しい紙を使っての色校は、刷り上がりをワクワクして待つ事も多いです。

そんな私ですが、好きな紙は何かと聞かれると洋紙ではなく和紙なんですよね。

ここでちょっと和紙と洋紙の違いを

洋紙木材パルプを原料とし、表面は滑らかでインクが乗りやすい

和紙楮や三椏など植物を原料とし、長い繊維が絡み合った構造になっており、オフセット印刷には不向きといわれる

自分が和紙に興味を持つようになったきっかけは3つあります

祖母の千代紙

父方の祖母が立体的な和紙人形の作成を趣味にしていて、作った後に余り紙をくれるのですが、それが楽しみで。色とりどりの千代紙は、まるで宝石のように感じられました。大切に保管して夏休みの工作などで使いましたが、きれいな紙でちぎり絵などを作ると、それだけで質がアップした気になりました。たぶんまだ残っているはず。

博物館学の講義

学生時代に博物館学芸員課程を履修していたのですが、カリキュラムの一つの博物館学を教えて下さったのが某庁書陵部を定年退職された方で、和紙に関する知識がとても豊富でした。

講義では、現物を見て触りながら雁皮・楮・三椏などの原料による和紙の違いや用途、扱い方・補修の仕方など惜しみなく教えて下さいました。大学の休暇時には某庁書陵部内部の見学もさせてくれ、資格取得のための講義ではありましたが、受講していて幸せな一年でした。これで和紙への興味が一気に広がりました。

歴史小説と実物

高校生ぐらいの時に読んだ瀬戸内寂聴さんの出家前の著書『祇園女御 上・下』(講談社文庫)に、院政期の后が作った歌集について書かれており、解説(馬場あき子著)でそれが実在することを知りました。

その10年ぐらい後に東京国立博物館で開催された『西本願寺展』で、歌集の実物=『西本願寺本三十六人家集』を見ることができたんです。

紙の美しさと当時の技術の高さに驚いて(図録には「装飾料紙の限りを尽くした冊子本」と書かれている)くそ重い図録をためらいなく購入してしまいました。本当に美しいんですよ(どんな紙か興味のある方はググって下さい)。今の技術で作れるのか謎なんですけど。

上記の3つの出会いによって、すっかり和紙に心惹かれるようになりました。

日本の古典文学が好きだったのも大きかったかもしれません。枕草子や源氏物語には紙についての記述も多いので。

日本には全国に和紙の産地がありますが(埼玉県にもありますね)、その土地によって特色があるようです。いつか心置きなく旅行ができるようになったら、和紙の産地を巡って違いを楽しんでみたいと思っています。

今は少し前に手に入れた雑誌の付録の和紙の見本帳を手に、心を慰めている毎日です。

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