木元省美堂の社員が様々な話題をお届けします!
2021年10月05日
バッハです。
コロナ禍以前は、年に数回は展示会や美術展に行くことがありました。今回は2018年に立て続けに開催された活版本展示会の話です。
9月8日〜24日 上野の森美術館「世界を変えた書物」展
金沢工業大所蔵の稀覯本コレクション「工学の曙文庫」から、コペルニクス、ガリレイ、ニュートン、アインシュタインなど世界を一変させた発見や科学技術に関する初版本約100冊を展示。
入場は無料。床から天井まで古書で埋め尽くされた展示ブースの画像に興味をひかれ、観に行きました。
予想外の人出の多さと、無料の展示会なのにTシャツ、スマホケース、風呂敷、古書をかたどったノート、傘と多数のグッズが用意されていたことに驚きました。しかもグッズはレジに行列ができるほどの人気。
10月3日〜9日 丸善丸の内本店 第30回慶應義塾図書館貴重書展示会「インキュナブラの時代―慶應義塾の西洋初期印刷本コレクションとその広がり」展。
インキュナブラとは活字による15世紀末までに印刷された書物のことで慶應義塾大学では国内有数のコレクションを所蔵。
展示会期間中は本についての10分ほどのギャラリートークあり。
その頃の活版本は写本の再現を目指していたので装飾が施されていましたが、刷物が送られた各地域でペイントしていたので本ごとに微妙に図柄が異なっていたそうです。
徐々に印刷本としての技術や工夫を重ね現代の書物になっていきますが、
・字下げは諸説あるようですが、段落をわかりやすくするためのイニシャルキャップの名残
・罫線は写本の下書きの名残
・マージンはページ装飾用のスペースの名残
など、写本から多くを受け継いでいます。索引は活版印刷が始まってからできたそうです。
10月20日〜2019年1月20日 印刷博物館「天文学と印刷」展
この時注目されたのは8種類のチラシ。8枚つなげると1枚の絵柄になります。
Twitterの投稿を見て、会社帰りに印刷博物館までチラシ回収にいきました。知らない道筋ではなかったので徒歩で向かいましたが思ったより遠く、着いた時は汗だくでした。
図録はコデックス装で180度広げる表1-4がチラシをつなげた絵柄と同じになる仕様。スリーブケース、箔押しと凝った一冊でした。
この中で印象に残っているのはインキュナブラコレクション。
本の製作という立場から興味深く拝見できました。慶應義塾大学では貴重書のデジタル化にも取り組んでいて、慶應技術大学情報メディアセンターのサイトから一般の人も閲覧可能となっています。
本という存在は「天文学と印刷」の図録のように完成されたモノとしての優位性がありますが、物理的に劣化するという避けられない現象を持ち合わせています。
デジタル・コンテンツは手に取ることのできない高価な貴重書だとしても、本のページをめくり、破損を気にすることもなく、PCやモバイルがあれば、いつでもどこでもだれでも閲覧できるという気安さがあり、劣化とは無縁(データ破損とかはあるかもしれませんが)の存在です。普段閲覧不可能なものが身近になるデジタル化はありがたいですけど、個人的にはいまでも紙が優位です。
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