きもとblog
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美しい黒

2020年07月03日

 バッハです。今回は銅版画について書いてみました。

みなさん黒といったらどんな色を思い浮かべるでしょうか? 黒は黒だろとおっしゃるかもしれませんが、黒は明るさや角度によって微妙な色成分が見え隠れして多彩だと思いませんか。
そんな中で個人的に銅版画の黒が好きです。

銅版画は凹版印刷。版面に溝をつけ、その溝にインクを詰め、そのインクをプレス機で紙に吸着させる技術です。

銅版画には直接技法と間接技法があり、代表的な間接技法はエッチングです。みなさんもエッチングという言葉には聞き覚えがあるかもしれません。これは腐食液を使用して版面に溝を作る技法で、多くの銅版画でこの技法が使用されています。
そして直接技法で代表的なのはエングレーヴィング。「エングレーヴィング? なんのこっちゃ?」と思われる方もいらっしゃると思いますが、ヴュランと呼ばれる彫刻刀で、修練を積んだ方なら1mmの幅に10本の線を引くという神業級の技法です。身近なところでは紙幣の原版がエングレーヴィングで製作されています。紙幣を製造している国立印刷局の中では、新札発行の日のために、日夜エングレービングの技術を磨いている方々がいらっしゃるということです。ところが、新札発行が決まっても誰が担当するかはその日まで分かりませんし、原版作成に携わっても墓まで持っていく秘密だそうです。

直接技法でもう一つ代表的な技法がメゾチントです。メゾチントはベルソー(ロッカー)と呼ばれる専用の器具を使い、板面全体にあらかじめ細かい溝を付け、その溝をバーニッシャーやスクレーパーと呼ばれる金属のヘラで溝を潰し描画する方法です。イメージとしては黒面に白で描画する感じです。

銅版画では塗りつぶしが必要な時は、必要面積分すべてに何らかの傷をつけなければなりません。
色が均一にのった綺麗なベタ面を作るためには、均一な溝をつける必要があり、さらに銅版画独特の余分なインクを拭き取るという手間のかかる刷り工程で仕上がりに違いが出ます。
製作者の技量によって、色が浅かったり深かったり、均一だったりムラがあったり、同じ作品を量産できるのが版画ですが、同じ質の作品を制作するのが難しいのも版画だと思います。

現存する数々の銅版画の中に、何百年も前に刷られたのに今でも刷りたてのようなしっとりした黒が見られる作品があります。
板面、刷り、保存環境など、様々な要因が重なりその状態を留めていることに思いを馳せながら鑑賞していると、色面でありながら色彩という概念に留まらずもっと奥深い空間が見えるようで、そんな黒を目にした時「美しい黒だ…」と感激します。

銅版画に興味のある方、ワークショップを一度体験してみてください。体験以後は作品鑑賞に変化があると思います。
そして自ら製作することに意欲のある方、銅版画の道具はすべて高価で自分で揃えるのは大変です。最大の問題は刷りに必要なプレス機で、小さくてもうん万円します。ちなみに銅版画の道具は神保町にある老舗の画材屋が一番の品揃え。一階は雑貨コーナーのようになっていて猫グッズなどが豊富。3階にはカフェもありますので、まずは気軽に立ち寄り、見たことのない道具類に触れてみるのもいいかもしれません。

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