木元省美堂の社員が様々な話題をお届けします!
2022年01月21日
バッハです。年が明けてから寒い日が続いていますが、みなさんいかがお過ごしでしょうか。
暖かい部屋でデスクワークと思われるかもしれませんが、換気が大事なご時世。ご多分に漏れずわが社も冷気が漂っています。
寒さに負けず今年も組版していますが、気になるInDesignデータがあったので検証してみました。
そのドキュメントは日本語の文章中に英文が差し込まれている横組みの書籍用データ。Proフォントで作成されていて、短縮・省略・所有格を表す「 ’ 」に対して、「 ’ 」の後ろにできてしまうスペースを詰める設定で組版していました。組版してると幾度も見かける文字「 ’ 」。なぜそのような設定になったのか検証してみました。
ユニコードでは以下のように定義されています。
Unicode | U+0027 |
---|---|
ブロック名 | 0000-007F(基本ラテン文字) |
文字名 | APOSTROPHE |
Unicode | U+2019 |
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ブロック名 | 2000-206F(一般句読点) |
文字名 | RIGHT SINGLE QUOTATIONMARK |
Unicode | U+02BC |
---|---|
ブロック名 | 02B0-02FF(前進を伴う装飾文字) |
文字名 | MODIFIER LETTER APOSTROPHE |
❶はマヌケ引用符と呼ばれ組版では使用しません。似ているもので「 ′ 」 U+2032 がありますが、これはプライムといって別モノです。注目するのは❷❸。
一見同じように見える文字ですが、ブロック、文字名が別なので使用目的が違うことがわかります。
注意すべきは「 ’ 」をプレーンテキストやワードからInDesignにコピーした時に、組版環境がStd/Proフォントであれば❷ U+2019 で括弧と同じ扱いになり、Pro5以降のフォントであれば❸ U+02BC で文字扱いになるということです。 この2つは視覚的図形を表すグリフコードで比較しても前者が CID671、後者が CID96 となっています。
リュウミンPro 文字組:行末約物半角
リュウミンPro6N 文字組:行末約物半角
検証データはProフォントで組版されていたので「 ’ 」は引用符(括弧扱い)。後に続く文字とは自動的に空きができてしまいます。そのため作成者はツメの指定をしたと思われますが文字名から判断すると正しくない設定となっています。
対処としてはStd/Proフォントでは文字スタイルでプロポーショナル字形を設定して対象文字に使用。グリフコードが CID96 になり、続く文字との空きが自動的に詰まります。一方のPro5以降のフォントでは等幅全角字形を設定し対象文字に使用。グリフコードが CID671 になり文字との空きができます。
リュウミンPro 文字組:行末約物半角
リュウミンPro6N 文字組:行末約物半角
文字スタイルによる字形変更でフォントバージョンが違っても同じアキ量になります。
A′とB′を乗算で重ねてみると同一アキ量なのが分かります。
今回の検証で改めて思ったことは、字形が似ていても名前が違うので「アポストロフィ」と「引用符」と呼び方からきちんと分けなければならないということでした。適当に呼んでいたような気がします。なお、ブラウザではグリフコードでの差別ができません。
他に波ダッシュ「〜」と全角チルダ「~」の違いもあります。インデザインの字形パレットではなぜかどちらも同じユニコード、グリフコード、文字名として表示されます。両者が混在したデータでは、見た目が同じでもユニコード検索をかけるとどちらか一方にしかヒットしません。
windows環境では「から」と入力、変換しても全角チルダになります。お客様からの支給テキストはほぼwindowsで作成されたデータなので「~」があればそれはチルダと思われます。テキストの「~」をコピーしてブラウザで検索してみるとどちらの文字か分かります(このテキストでも試すことができます)。日本語テキストでは波ダッシュの方が正しいとされていますし、正規表現や検索では厳密に区別されるので対象文字列がヒットしないことになるので注意が必要です。
欧文組版では「〜」は使用せず、ハイフンやtoと表現するようなので、使用する場合はお客様に確認した方がいいでしょう。
因みにワードでも301Cと入力してから、文字列を選択、Alt+xを押すと波ダッシュに変換できます。FF5Eと入力してAlt+xを押すと全角チルダになりますが、macのワードではコードを入力してからの変換ができません。
そして「ダッシュ」。これも各種ありますが見送り。
組版でPCに接しているとテキストも0と1の羅列だということを忘れてしまいがちですが、PCは文字の視覚的図形を理解せず、コードとしての抽象的な文字解釈しかしません。
見た目に流されないよう、これからも適切な対応で組版しようと新たな決意です。
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