
前年(2023年版)に続きご依頼いただいた株式会社松下産業様の2024年版カレンダー。
かつて都内でも有数の旅館街として知られていた文京区。現在ではわずか数軒を残すのみとなった旅館の一つが「鳳明館」です。
創業以来65年間、文京区に本社を構え、建設事業とともに古い町並みや建物の保存・記録活動を支援してきた株式会社松下産業様は、2022年4月に本郷最後の木造旅館「鳳明館」の事業承継を行いました。本カレンダーは、その中の「鳳明館 森川別館」をモチーフに制作したものです。
モチーフとなった「鳳明館 森川別館」は、鳳明館の別館として、明治時代に建てられた本館、台町別館に続いて建てられた建物です。
職人の創意工夫が随所に感じられる建具や装飾が数多く残されており、館内を巡りながら見どころを探す楽しさも、この建物ならではの魅力となっています。
館内に足を踏み入れると、開放感あふれる広々としたロビーや廊下が広がり、風通しと採光に優れた客室など、初めて訪れた場所でありながら、どこか懐かしさを覚える、そんな感覚を抱かせてくれます。
一方で、撮影においては、その「見どころの多さ」ゆえに、撮影ポイントを一つに絞ることが難しいという課題もありました。
建具や装飾、空間の広がりなど、どれもが切り取る価値を持っており、限られたカレンダーの紙面の中で「何を」「どのように」伝えるかを検討した結果、本作では、ひとつの写真に収めきれない魅力を伝えるため、写真を分割して構成するデザインを採用しました。
複数の視点を一枚の中に組み込むことで、森川別館が持つ多層的な魅力や空間の豊かさを表現しています。

カレンダーは日常の中に溶け込んでいるプロダクトであり、日付や曜日を確認するとき以外にも、ふと視界に入る存在です。
そのふとした瞬間にこのカレンダーを目にすることで、森川別館の空気感を感じ取り、自分の中にある懐かしい記憶までもが静かに呼び起こされる──そんな体験を届けるカレンダーに仕上げました。



傍島利浩(株式会社プンクトゥム)
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