Webサイト・ホームページを活用ができていない中小企業に伝えたい。Webサイトを活用して得られること
2022年07月28日
前回の記事「なぜ多くの中小企業がWebサイト・ホームページを活用できないのか?」では、中小企業がWebサイトを活用できない理由を解説しました。
その中で「どんな良い結果を得られるかが想像できないから」という理由を述べました。
このような理由でWebサイトの活用に二の足を踏んでいる中小企業の皆さんに少しでも前向きな姿勢を持ってもらえないかと考え、本記事では当社のWeb活用の歴史とデータを見せながらWebサイトを活用して得られたことをお伝えしたいと思います。
当社のWebサイト活用の歴史
Webサイトを活用して得られることを語る前に、当社のWebサイト活用の歴史を簡単にですが述べたいと思います。
当社がWebサイトの活用を真剣に考え始めた時期は2010年にまでさかのぼります。
それまでは、2〜3ページで概要程度しか掲載していないサイトを所持していましたがビジネスへの貢献度が低く、名刺代わりとしてしか機能していなかったと断言できます。
そういった状況で会社の認知度向上や新規顧客の獲得に新たな活動が必要と考え、サイトのリニューアルを実施し、本格的にWebサイトを活用するための運用を開始したのが2010年になります。
補足ですが、この2010年から現在までWebサイトの運用を担当しているのが筆者になります。当社に新卒入社して与えられた課題がWebサイトの活用で、以降約13年間独学で試行錯誤、四苦八苦しながら運用を続けています。
(ただし、Webサイトの運用だけではなく、印刷物の制作の仕事やサービス開発も同時に行っていたため兼任担当者でした。)
Webサイトの運用スタイル
当社のWebサイトの運用スタイルは以下の通りです。
担当者 | 主要担当者1名(他業務と兼任) ブログ記事の執筆など、狭い範囲での関係社員:十数名程度 |
---|---|
更新作業 | 社内対応 |
広告配信 | デジタル広告の配信はなし |
サイトシステム | 独自CMSのRabbity-CMSを使用 |
他業務との兼任担当者1名、更新は社内対応、広告配信は低予算(当社は配信なし)といった多くの中小企業にありがちなスタイルで当社もWebサイトを運用しています。
サイトは、当社で提供している独自CMSのRabbity-CMSを使用して構築しています。
主要担当者はHTML/CSSの知識を要しているので、サービス内容などのページの追加やデザイン変更などの更新作業に対応しています。また、成果の集計作業も担っています。
社員ブログにて情報発信を行っている関係社員は、記事ページの作成から公開までを行っています。
Rabbity-CMSは、HTMLやCSSの知識がなくてもページの作成などができるため、限定的ではありますが多くの社員がWebサイトを使っています。
Webサイトの運用履歴
Webサイトの運用履歴として、2010年からのサイトのアクセスデータと成果履歴データ(商談依頼・見積り依頼・商品購入件数を集計。当社では有効コンバージョン※1と呼んでいます)をグラフにまとめました。
※1:コンバージョンとは、ビジネスの成功にとって重要なユーザーの操作や行動が完了すること。略はCV。
アクセスデータは年間の訪問数(セッション)とページ閲覧数(ページビュー。以下PV)を約13年分グラフ化しています。
途中で決算月が変更になったため2010年からの3期は参考値になりますが、アクセス数はグラフのような推移で増えていきました。

アクセスデータ(訪問数・ページ閲覧数)
成果履歴データは、サイトに設置したフォームやカートからの商談依頼の問い合わせ件数、見積り依頼の問い合わせ件数、商品購入件数を集計し、グラフ化しています。
電話でのお問い合わせは正確に集計できていないため除外しています。
(「Webサイトを見て〜」という電話でのお問い合わせもWebサイトの成果といえます。)
資料請求などの中間コンバージョンを設けていなかったため問い合わせのハードルが高く、件数はあまり多くありませんが、徐々に増えていったことがわかります。

成果履歴(商談依頼・見積り依頼・商品購入件数)
この12年を振り返ると、以下のような変化があったと感じています。
1〜3期
1〜3期のサイト運用は、商品・サービスページの追加が主な活動。担当者個人としては、更新作業もままならない状況からHTML/CSSを勉強して、滞りなく更新作業に従事できる状態に持っていった期間でした。
4〜8期
4〜8期は、コンテンツ戦略を検討し、案内メインから必要な情報を収集できるサイトにリニューアルし、商品・サービスページの内容拡充、印刷会社の「印刷」について学べるページの作成など、コンテンツの拡充を行った期間でした。
この期間は、Webサイトの戦略をきちんと考えて実行し始めた期間といえます。本を読んだり、ネットの情報を漁ったりしながら試行錯誤して何とか成果につなげようとしていました。
結果的にアクセス数では年間PV数が10万を超え、商談・見積り依頼の問い合わせ件数では1〜3期の1.5倍に伸ばすことができました。
(実数があまり多くはないので偉そうなことは言えませんが…)
ちなみにアクセス集計ツールのGoogleアナリティクスを使い始めたのもこの期間です。
それまで使っていたツールとは違い、様々なデータを収集・分析できるようになったため、論理的に施策を実行できるようになりました。
戦略立案、施策の実行、データの収集・分析と、やること・勉強することが多く、大変ではありましたがWeb担当者として成長できた期間だったと感じています。
9〜12期
9期目には、7〜8期の伸び悩んでいたアクセス数の改善を目的に、Webサイトの集客施策としてオウンドメディアの運用を開始しました。
ノウハウを記事形式で作成するのが初めてであったため、ここでも試行錯誤しながら施策を実行していました。
実務と並行して対応していたため、量より質重視で記事を作成。発信できた記事数は少ないながらも結果的にアクセス数が伸び、集客という目的は達成できました。
しかし、有効コンバージョン数はあまり伸びなかったため、オウンドメディアからサイトへの誘導効果が課題となりました。
10期には、Webサイトを当社独自CMSのRabbity-CMSで構築して全面リニューアルを行い、Webの知識がない社員でも利用できるようにしました。
現在は、サイト全般の管理を主担当者が対応し、関係社員には「社員ブログ」で情報発信に取り組んでもらうという形式でサイトを運用しています。
11〜12期は、Webサイトの内容充実よりも当社の事業強化を図る新商品や新規サービスの開発に力を入れていました。
今後も継続して事業強化に取り組みつつ、サイトの充実化を図り、Webサイトのビジネスへの貢献度を高めていくつもりです。
Webサイト・ホームページを活用して得られること
ここからは本記事の主旨である「Webサイト・ホームページを活用して得られること」について述べていきます。
ちなみに当社のWebサイト活用の歴史を記した目的は、当社と似た状況の方(または、Webサイトを活用した場合に同じような運用スタイルになると思われる方)に解像度高く得られることを知ってもらうためです。
中小企業と言っても事業内容や従業員数など様々で一括では語れません。当社の状況が少しでも参考になればと思い記していることをご了承ください。
直接的にビジネスに貢献する成果
まず1つ目ですが、Webサイトを活用すると、商品の購入、商談依頼、見積り依頼といったビジネス(業績)に直接的に貢献する成果を得られます。
当社の成果履歴データからもわかる通り、Webサイトを活用すると「仕事」につながる問い合わせなどが発生します。
例えば、新規顧客開拓に取り組んでいる会社で中々商談につながらないという状況であれば、顧客側から依頼がくるというのは非常に助かります。
当然依頼がきただけでは受注確定とはなりませんので、その後の営業対応が必要となりますが、顧客側から声をかけてもらえるため受注確度が高まります。
当社の場合ですが、Webサイトからのお問い合わせを背景に取り引きできるようになったお客様で、年間1000万円の売上をあげた事例もあります。
もちろん問い合わせ後の営業担当者となった方の努力のおかげですが、Webサイトが受注の一助となったのは確かです。
間接的にビジネスに貢献する事象
2つ目は、Webサイトを活用すると間接的にビジネスに貢献する事象が発生することです。
例えば以下のような事象があげられます。
仕組みの構築
Webサイトを活用するとは、Webサイトを利用して「売れる」仕組みを構築することに他なりません。
ユーザーの検討フェーズ(段階)に合わせたコンテンツをサイト内に備え、ユーザーがアクションを起こせる場を設けることで、サイトに訪れたユーザーに24時間365日自動で対応ができ、問い合わせなどのアクションを起こしてもらえる仕組みを構築できます。
仕組み構築の参考となる記事も作成していますので合わせてご覧ください。
「デジタルマーケティングにおけるWebサイト・ホームページの役割とは?」を見る>
コスト削減
Webサイトを活用することは、人件費、営業経費、広告宣伝費、販売促進費といった様々なコストの削減を可能とします。
資金力に乏しい中小企業においてコストが抑えられることはWebサイト活用の大きなメリットです。
当社も広告費をかけずにWebサイトから新規案件を獲得しており、Webサイト活用のコストメリットを享受しています。
Webサイト活用も含まれるデジタルマーケティングに関する記事「ビジネスにデジタルを活用する。中小企業が取り組むべきデジタルマーケティングとは」に、コスト削減について詳しく書いていますので合わせてご覧ください。
信頼感
上記2つと異なり、心理的・感覚的なことになりますが、Webサイトをきちんと活用することは自社への信頼感を生み出すことにつながります。
Web経由ではなく紹介などから取り引きにつながった顧客の中には、Webサイトのデザインや更新頻度、内容を見て信頼できると評価いただいた事例がいくつもあります。
トライベック・ブランド戦略研究所の『BtoBサイト調査 2021』の調査結果では、BtoB顧客側が製品・サービスの購入のために最もよく参考にする情報源を「企業のWebサイト」と回答しています(66.7%)。※2
このようにWebサイトによる情報収集が一般的になった社会で、Webサイトをきちんと活用していることは取り引き先候補として評価されるポイントになります。
その他
上記2つとは毛色が異なりますが以下のようなメリットもあります。
スモールスタートの場になる
Webサイトはデジタルの特性上、新規事業などのスモールスタートの実践の場になりえます。
新規事業の発信の場、社内プロジェクトの発信の場としてWebサイトを利用することで、「まずやってみる」「やりながら改善し、育てていく」といったスピード感で施策を実施でき、費用を抑えることも可能です。
さらにWebサイトをCMSで構築すれば誰でも使うことができる状態になり、人を巻き込みやすくなります。
当社の例ですが、「Good Job Card」はWebサイトでのスモールスタートで事業化できましたし、社員ブログでは多くの社員が記事を発信しています。
このようなスモールスタートの場があることで会社の成長につながる取り組みを実行しやすくなると考えます。
仕事に活かせるスキルを得られる
これに関しては主担当者としての主観になってしまいますが、Webサイトの活用に携わることで仕事に活かせる様々なスキルを得られたと感じています。
例えば以下のような事項があげられます。
- 戦略や施策の立案
- ユーザー視点でものごとを考える力(顧客視点)
- 文章力
- ストーリー構成
- 写真の撮影スキル
- 根拠ある目標数値の設定
- サービス企画・構築
- マニュアル作成
- データ分析
- デジタルリテラシーの向上
このように多くのスキルの取得またはスキルの向上が図れたと感じています。
Webサイトなどのデジタル媒体は、一人でもすぐに始めることができ、修正も簡単であるため、施策を実行するハードルを下げてくれます。
また、結果を数値データで確認することもできるためモチベーションを維持することが可能です。このような場があることで主体的に取り組みたいという意欲が湧いてきます。
何かチャレンジしてみたいと考えている方こそ、個人の成長の場という視点でWebサイトの活用に取り組んでみてはいかがでしょうか。
まとめ
本記事では、当社の実例をもとにWebサイトを活用することで得られることについて述べてきました。
当社のWebサイトもまだまだ発展途上で改善の必要がある状況ですが、Webサイトを活用できていない中小企業にとって少しでも参考になれば幸いです。
ぜひ皆さんもWebサイトを活用してビジネスの成功を目指しましょう。
参考資料
※1:トライベック・ブランド戦略研究所『BtoBサイト調査 2021』 BtoBサイト調査 2021
https://brand.tribeck.jp/research_service/websitevalue/bb/bb2021/
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しかし、多くの中小企業のWebサイトではこのような失敗が跡を絶ちません。
- 目的がはっきりしていないため、戦略のないサイトになってしまった
- サイトリニューアルは、見た目のデザインを変えただけ
- コストを抑えることに注力しすぎて、中身の薄いWebサイトになってしまった
- Webサイトを作っただけで放置している
- Webサイトの効果測定をしていない、サイトの改善に利用していない
- ユーザーにとって役に立たない情報を発信している(事業に関係のない個人的な情報など)
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